紅茶の基礎、入れ方に続いては、茶葉について確認していきましょう。
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お茶の樹「カメリア・シネンシス」
不思議なもので、味や香り、色が異なる紅茶や緑茶は、実はどれも同じ木から作られます。
その木は、椿やサザンカの仲間で、常緑樹のチャノ木になり、学名は「カメリア・シネンシス」といいます。
温暖で雨の多い温帯から熱帯の地域で栽培され、芯芽、若葉、茎などが原料になっています。
茶葉の違い
茶葉の違いといっても、主に2種類になります。
アッサム種
インド・アッサム地方で発見され、タンニン含有量が多い紅茶向きなのがアッサム種です。
縦12~15cm、横4~5cmの葉長で肉厚の大きいサイズで、高温多湿の土地を好む喬木(きょうぼく)です。
中国種
もう一方は中国種です。
縦6~9cm、横3~4cmの小さい灌木(かんぼく)で、耐寒性があり、標高が高い冷涼な地で栽培され、温帯向き、交配種も作られています。
日本の茶も中国種になります。

丈(たけ)の高い木 ・・・喬木(きょうぼく)
横に枝分かれして広がる低い木 ・・・灌木(かんぼく)
茶の分類

紅茶も緑茶も同じ木から、ということですが、どういったタイミングで紅茶や緑茶に分類されるのでしょうか。
それは、葉に含まれる酸化酵素の働き度により何のお茶になっていくかが決まります。
茶葉の発酵
“発酵”というと、基本的にイメージするのは菌などの働きによるもの(菌類発酵)かもしれませんが、お茶の場合は異なり、リンゴの実やバナナの皮が茶色くなるようなイメージだといいでしょう。
お茶の発酵は次のような度合があります。
強発酵茶(紅茶)
酸化酵素の働きを強めたものが強発酵茶で、紅茶ということになります。
摘んだ葉をしおらせ、機械で揉み、褐色になるまで十分に酸化酵素の働きを高めて乾燥させ、英国式紅茶(オーソドックス/アンオーソドックス)、中国式紅茶(工夫、小種など)ができます
半発酵茶(中国茶)
酸化酵素の働きを途中で止めたものが半発酵茶で、代表的なお茶として烏龍茶になります。

発酵の働きを高めるか(紅茶に)、途中で止めるか(烏龍茶に)により、その茶葉の運命が決まるということですね。
不発酵茶(緑茶)
摘み取ってからすぐに加熱 するのが緑茶です。
茶葉を蒸し、あるいは釜で炒ることで、熱を加えて茶葉の酸化酵素の働きを止めて作られるのが不発酵茶になります。
日本茶(緑茶)、中国緑茶(炒製)は不発酵茶にカテゴライズされます。

中国緑茶(炒製)からはさらに、菌類発酵(後発酵茶)によって、プーアール茶などの黒茶や、 君山銀針などの黄茶ができます。
茶葉のグレード

“グレード”というと、高品質かどうかや、何かしらの階級的な意味合いを持っているイメージがありますが、茶葉のグレードは葉の良し悪しのことではなく、茶葉の大きさの単位のことです。
リーフグレード
茶葉の大きさの単位には、次のようなものがあります。
フラワリー・オレンジ・ペコー FOP
オレンジ・ペコーの中でも芯芽(チップ)が多く、割合が多いものほど上級です。
(※”上級”とついているのは割合としてです)
オレンジ・ペコー OP
柔らかな若い葉と芯芽からなっていて、細長くよりが強くねじれています。
ペコー P
オレンジ・ペコーよりやや堅い葉で、短く太めによられ、香りも水色も薄いものになります。
ペコー・スーチョン PS
ペコーよりもさらに堅い葉からなっていて、よりも太く短く、香りも水色も弱いものになります。
ペコー P
オレンジ・ペコーよりやや堅い葉で、短く太めによられ、香りも水色も薄いものになります。
ペコー・スーチョン PS
ペコーよりもさらに堅い葉からなっていて、よりも太く短く、香りも水色も弱いものになります。
スーチョン S
ペコー・スーチョンよりも丸みがあり、大きく葉は堅いものになります。香りが独特のラプサンスーチョンに使われます。
ブロークン・ペコー・スーチョン BPS
ペコー・スーチョンの茶葉をカットして、篩にかけたものになり、ブロークン・ペコーよりも大きいです。
ブロークン・ペコー BP
ペコーをカットしたもので、ブロークン・オレンジ・ペコーよりサイズは大きく、芯芽は含みません。
ブロークン・オレンジ・ペコー BOP
オレンジ・ペコーをカットして、芯芽を多く含んでいます。
ブロークン・オレンジ・ペコー・ファニングス BOPF
ブロークン・オレンジ・ペコーをさらに篩いにかけたもので小さく、ブレンドやティーバッグに使用されます。
ファニングス F
ブロークン・オレンジ・ペコー・ファニングスを篩いにかけ、形は扁平で細かいものになり、ダストよりも大きいです。
ダスト D
篩いにかけて分けたものになり、葉のサイズが最も小さいものになります。

なお、CTCというものもありますが、これは茶葉のグレードではなく製法です。
また、 ”オレンジ”とありますが、オレンジの香りや味がするわけではなく、オレンジの葉に似ていたり、酸化して乾燥させる前の茶葉がオレンジ色に見えたりと、諸説ありすぎなようです。
リーフの名前
葉が付いている位置によって、リーフの呼び名が変わります。
グレードとはほとんど関係ないものになります。
次のイラストの①~⑤に呼び名があります。

① フラワリー・オレンジ・ペコー FOP
一番先端にある新芽(芯芽)で、1枚目の葉になります。
② オレンジ・ペコー OP
先端から2枚目の葉です。
③ ペコー P
先端から3枚目の葉です。
④ ペコー・スーチョン PS
先端から4枚目の葉です。
⑤ スーチョン S
先端から5枚目の葉です。
茶摘みは1芯2葉(①、②、③までのもの)を基本に、量産目的とした1芯3葉(①、②、③、④までのもの)を摘み取ることがあります。
グレード別抽出時間の目安
茶葉のサイズが異なれば、抽出時間も変わります。
オレンジ・ペコー(OP)、ブロークン・オレンジ・ペコー(BOP)、CTCのタイプを例にすると、次のようになります。
針金状の長い葉で、大型のリーフとなるオレンジ・ペコーのタイプの茶葉であれば、一杯はおよそ3gで、3~5分蒸らすのが目安です。
サイズが2~3ミリで、最も多く流通しているブロークン・オレンジ・ペコーの茶葉は、一杯はおよそ3gで、2.5~3分を目安に蒸らします。
CTC製法の茶葉は、一杯およそ2.5gで、抽出時間が早いので1~2分を蒸らし時間にするのが目安です。

今まで茶葉のグレードを気にしていなかったのであれば、抽出時間を気にかけて紅茶を入れてみてください。
味や香りの違いがわかるかもしれません。
栽培方法について

茶樹には、国際規格で認定されている2種類(アッサム種、中国種)がありますが、どちらも栽培に適しているのは、 雨量の多い地域で、排水が良好な広い土地と弱酸性の土壌が望ましいとされています。
北はグルジア、南はオーストラリアまで、熱帯を挟んで亜熱帯地域という幅広さがあり、中国の南西部を含めて、北回帰線から赤道まで、「ティーベルト」と呼ばれるエリアで、良質な茶が生産されています。
また、安価な土地代、労働力の確保なども必要で、同じ土壌で育て続けていくことで、良質な茶樹を増やしていくのに必要な条件とも言えるでしょう。

日本にも、和紅茶、地紅茶といったものがありますが、栽培における最適な環境があるかというと、なかなか難しいですね。
暑いときはめちゃくちゃ暑いですし、寒いときはかなり寒いです。
故に耐寒性のある中国種で、古来より緑茶が採用されているのではないかと思います。
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